能登半島地震の墓地復旧支援制度【2026年9月版】|自治体別まとめと申請窓口

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2024年1月1日の能登半島地震 (最大震度7) から2年半以上が過ぎ、住まいの再建が進むなかで「倒れたままのお墓に使える補助はあるのか」「町によって支援が違うと聞いたが、実際はどうなっているのか」という相談が増えています。墓石の補修は住宅と違って国の制度の対象外になりやすく、情報が市町ごとにばらばらに出ているため、全体像がつかみにくいのが実情です。

この記事では、2026年9月27日時点で国・石川県・能登地域7市町 (珠洲市・輪島市・能登町・七尾市・穴水町・志賀町・中能登町) の公式ホームページを確認し、墓地・墓石の復旧に関係する支援制度を自治体別に整理しました。各制度には、確認したページの「更新日」を添えています。

先に結論をお伝えすると、個人の墓石そのものに使える補助を公式に確認できたのは、7市町のうち能登町と穴水町の2町です。もう一つの柱は、集落で共有する墓地の通路・擁壁などを対象にした県の復興基金メニュー「共同墓地復旧支援事業」で、志賀町が実施を公表しています。

残る市では、墓地に特化した支援を公式ページ上で確認できませんでした。ただし「制度がない」と確定したわけではないため、担当窓口への確認をおすすめします。

能登半島地震の墓地被害と、関係する制度の全体像

能登半島地震では、墓石の転倒・ずれに加えて、墓地の地盤沈下や地割れ、通路・擁壁 (土留めの壁) の崩れといった「土地ごとの被害」が各地で起きました。お墓の被害は大きく次の3つに分けて考えると、どの制度が関係するかを整理しやすくなります。

被害の類型 具体例 関係する主な支援
個人区画の墓石 棹石 (さおいし=最上段の縦長の石) の転倒、各段のずれ、外柵の破損 町独自の墓石等復旧支援補助金 (能登町・穴水町で確認)
墓地の共有部分 通路・擁壁・水道設備の損壊、共有部分に倒れ込んだ墓石 県復興基金の共同墓地復旧支援事業 (集落共有墓地が対象)
住まいと生活 住宅の全壊・半壊など 被災者生活再建支援金など (墓地は直接の対象外)

能登地域は高齢化と人口減少が進み、墓を守る世帯が金沢など地域外へ移っているケースも少なくありません。後述するとおり、町の墓石補助には「地震発生日に町内に住民登録があった世帯」という条件が付いているため、誰が申請者になるかが最初の分かれ道になります。

北陸では12月以降の積雪で工事が止まりやすく、雪の重みや凍結で、傾いた墓石の状態がさらに悪くなることもあります。制度の確認と見積もりを秋のうちに進めておくと、融雪後の着工に間に合わせやすくなります。

国の支援制度と墓地の関係

能登半島地震では災害救助法と被災者生活再建支援法が適用されましたが、いずれも住まいと生活の再建を目的とした制度です。墓石や墓地の復旧費を直接まかなう国の給付制度は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。

制度 内容 (公式情報) 墓地との関係
被災者生活再建支援金 住宅が全壊するなど生活基盤に著しい被害を受けた世帯が対象。基礎支援金は最大100万円、加算支援金は建設・購入で最大200万円 (石川県ページ、更新日2026年9月7日) 住宅被害が要件のため、墓石の被害だけでは対象になりません。受給した支援金の使い道は被災世帯の判断に委ねられます
災害救助法 (住宅の応急修理など) 避難所・応急仮設住宅・住宅の応急修理などの救助 墓地・墓石は救助の対象外です
災害弔慰金 災害で亡くなられた方のご遺族に支給される制度 墓石の復旧とは別の制度です

被災者生活再建支援金の申請期間は、石川県の公表 (2026年9月7日更新) で、基礎支援金が七尾市・輪島市・珠洲市・内灘町・穴水町・能登町で2027年2月1日まで、かほく市・志賀町で2027年8月2日までです。それ以外の市町 (中能登町を含む) の基礎支援金は、すでに申請期間が終了しています。加算支援金は2027年2月1日までです。住まいの手続きが済んでいない場合は、墓より先にこちらの期限を確認しておくと安心です。

石川県の支援:復興基金の「共同墓地復旧支援事業」

石川県は、国の特別交付税520億円と能登半島地震被災地支援宝くじの収益金約19.8億円をもとに、総額約539.8億円の「令和6年能登半島地震復興基金」を設けています。国の制度では手が届かない部分を埋める目的で、熊本地震の復興基金メニューを参考に基本メニューを定め、市町が事業を実施する仕組みです (石川県ページ、更新日2026年4月1日)。

県は、基金事業の申請窓口は各市町であり、個別の相談も各市町へ、と案内しています。

墓地に関係するのが「共同墓地復旧支援事業」です。この事業を実施している市町の公式ページ (羽咋市・内灘町・志賀町) を確認すると、内容は次のとおりでした。

項目 内容 (羽咋市・内灘町の公式ページより)
対象となる墓地 墓地埋葬法の経営許可を受けた (または許可を受けたとみなされる) 墓地・納骨堂のうち、集落の一部または全部の人が共同で設置・管理するもの
対象外の墓地 地方公共団体・宗教法人・公益財団法人・個人が経営主体の墓地
対象工事 原形復旧を基本とした、(1) 共有部分 (通路・外構・水道設備・建築物等) の復旧工事、(2) 共有部分や他人の区画に倒れた墓石の移設工事。2024年1月1日以降に実施済みの工事も対象 (羽咋市)
対象外の経費 合葬墓等も含め、墓石の復旧に要する経費 (羽咋市)
補助額 対象経費の2分の1 (千円未満切り捨て)、上限1,200万円
主な提出書類 交付申請書、設計図書 (位置図・計画平面図等)、見積書の写し、被災状況の写真、墓地経営許可を確認できる書類または集落所有を示す登記事項証明書 など (羽咋市)

この事業は、集落 (町内会・墓地組合など) が申請者となって共有部分を直すためのものです。個人の墓石の補修費には使えないため、個人区画の墓石は次章で紹介する町独自の補助などで別に考える必要があります。

基本メニューの詳細は、県の「令和6年能登半島地震復興基金基金交付金基本メニュー (市町事業)」(2026年4月1日版PDF) に掲載されています。実施するかどうかや受付期間は市町ごとに異なるため、最終的にはお墓のある市町の窓口で確認してください。

能登7市町の墓地・墓石支援一覧 (2026年9月時点)

7市町の公式ホームページで、墓地・墓石に関する支援を確認した結果を一覧にしました。「確認できず」は、公式サイトの支援制度一覧などで該当する制度を見つけられなかったという意味で、制度がないと断定するものではありません。

市町 制度名・対象 補助額 窓口 受付期限・確認ページ更新日
能登町 能登町墓石等復旧支援補助金。町内の墓石・付帯部分 (石板・門柱・羽目) の補修・新規建立、町内への移設建立 対象費用の2分の1 (最大10万円) 住民課 (役場1階。総合支所・支所では受付不可。郵送・電子申請も可) 2025年4月1日〜2029年3月30日 (平日9時〜16時)/更新日2025年4月1日
穴水町 墓石等復旧支援事業補助金。町内のお墓等の復旧・新規建立・移設 (町内への移設に限る) 対象経費の2分の1 (千円未満切り捨て)、1世帯10万円上限、申請1回限り 環境安全課 (郵送可) ページ上に受付期限の記載なし (要確認)/更新日2024年10月1日
志賀町 共同墓地復旧支援事業。集落共有墓地の通路・擁壁等の共有部分 町の要綱で確認 (県基本メニューは2分の1・上限1,200万円) 環境安全課 要綱で確認/復興支援補助金一覧の更新日2025年12月2日
珠洲市 「【地震】支援制度の情報」ページでは墓地・墓石向けの制度を確認できず ― 市役所へ要確認 確認ページ更新日2025年4月16日
輪島市 墓石向け補助は確認できず。市の合葬式墓所は地震で休止後、2024年5月13日に受入を再開 ― 合葬式墓所は市民生活部 環境対策課 2026年8月に、合葬式墓所への道が一部通行止めのため迂回ルートを案内
七尾市 「令和6年能登半島地震支援制度一覧」に墓地・墓石向けの制度の掲載なし ― 市役所へ要確認 確認ページ更新日2026年5月28日
中能登町 「生活再建に関する支援制度」に墓地・墓石向けの制度の掲載なし ― 町役場へ要確認 確認ページ更新日2026年5月1日

能登町と穴水町の補助は、どちらも「2024年1月1日時点で町内に住民登録 (住所) があった世帯」「過去にこの補助金を受けていない」「町税の滞納がない」ことが条件です。町外に住む承継者が申請できるかは、この住所要件との関係で個別に判断が分かれる可能性があるため、申請前に窓口へ確認してください。

能登町・穴水町の補助は、工事と支払いを終えてから領収書を添えて申請する「後払い型」です。一方、共同墓地復旧支援事業は、見積書や設計図書を付けて申請する流れが示されています。

能登町・穴水町の提出書類

能登町 穴水町
  • 交付申請書 (様式第1号)
  • 交付請求書 (様式第3号)
  • 領収証書の写し、または請求書と支払い完了が分かる書類の写し (宛名は申請者か同一世帯員のみ)
  • 墓石等の位置図と完成写真
  • 口座情報の写し
  • 身分証明書の写し
  • 世帯員の納税証明書・住民票 (同意により省略可)
  • 補助金申請書兼請求書 (様式第1号)
  • 領収証書等の写し
  • 復旧後の墓石等の写真 (カラー印刷など)
  • 墓石等の位置図 (住宅地図や地図アプリの印刷で可)
  • 振込口座の通帳等の写し

両町とも、提出書類の一覧に罹災証明書 (りさいしょうめいしょ=災害による住家被害の程度を市町村が証明する書類) は含まれていません。ただし様式や運用は変わることがあるため、申請前に最新の様式を町のページで確認してください。

公営墓地・寺院墓地・集落共同墓地で変わる支援

同じ被災墓地でも、墓地の経営主体によって使える制度が変わります。とくに県の共同墓地復旧支援事業は、経営主体による対象外の規定がはっきりしています。

墓地の種類 共有部分 (通路・擁壁など) 個人区画の墓石
集落共同墓地 (町内会・墓地組合) 県復興基金の共同墓地復旧支援事業の対象になり得る (実施市町のみ) 能登町・穴水町は町独自補助の対象になり得る
公営墓地 (市町営の墓地公園など) 共同墓地事業の対象外。管理者である市町が復旧方針を決める 能登町・穴水町は町独自補助の対象になり得る
寺院墓地 (宗教法人) 共同墓地事業の対象外。寺院側の方針・費用負担の確認が必要 能登町・穴水町は町独自補助の対象になり得る

能登町・穴水町の個人向け補助は、補助対象を「町内の墓石等」としていて、ページ上では墓地の経営主体を限定していません。自分の区画がどの種類の墓地にあるか分からない場合は、まず管理者 (寺院・町内会・市町の担当課) に確認しましょう。

寺院墓地では、寺院そのものが被災して境内の復旧を優先しているケースもあります。通路や擁壁の工事と個人区画の工事を同時期に行うと重機の搬入が効率的になることもあるため、管理者の復旧スケジュールを聞いてから個人の工事時期を決めるのが順序として無理がありません。

申請の流れと注意点

後払い型の町独自補助 (能登町・穴水町) を例に、一般的な流れを整理します。共同墓地の事業は申請者が集落になるので、町内会や墓地組合の役員と相談して進めてください。

  1. 被害状況の記録:着工前の状態を写真に残す (町の書類一覧は完成写真ですが、見積もりの比較や親族への説明にも役立ちます)
  2. 要件の確認:2024年1月1日時点の住民登録、過去の受給歴、町税の滞納の有無を確認する
  3. 石材店への見積もり依頼・契約:複数社から内訳付きの見積もりを取る
  4. 工事の実施・完了:完成写真を撮る
  5. 支払いと領収書の受け取り:宛名は申請者本人か同一世帯員にする (能登町の条件)
  6. 申請書 (兼請求書) の提出:位置図・写真・口座の写しなどを添える
  7. 交付決定・入金

申請でつまずきやすいポイント
領収書の宛名が申請者と別世帯の親族になっていると、能登町の条件を満たさない可能性があります。親族で費用を分担する場合も、支払い名義を誰にするかを工事前に決めておくと手戻りを防げます。どちらの町も申請は1世帯1回限りなので、複数の区画や段階的な工事を予定している場合は、まとめて申請するか先に窓口で相談しておきましょう。

受付期限は能登町が2029年3月30日と明示している一方、穴水町のページには期限の記載がありません。復興基金を財源とする事業は予算や期間が見直されることもあるため、工事を決めた段階で一度、窓口に最新の状況を確認しておくと安心です。

復旧工事の実務:見積もり・保険・冬前の段取り

石材店の選び方と相見積もり

震災後は石材店への依頼が集中し、現地調査まで時間がかかる状況が続いてきました。見積もりは「一式」ではなく、解体・据え直し・基礎補修・部材交換・運搬・処分に分けて出してもらうと、比較しやすく、補助の対象経費も説明しやすくなります。

地盤が沈下・傾斜している区画では、墓石だけを据え直しても再び傾くおそれがあります。基礎や地盤の補修が必要かどうかを現地で説明してくれるかも、比較の目安になります。

訪問や電話で突然工事を勧められ、その場での契約を迫られた場合は即決を避けてください。不安があるときは消費者ホットライン「188」に相談できます。

地震保険は墓石には使えない

地震保険の対象は居住用の建物と家財で、墓石は含まれません。墓石向けの保険や石材店の保証も、地震による損害は免責 (補償の対象外) とされている例が多いため、契約書や保証書の条件を確認しておきましょう。費用の見通しは、町の補助がある場合でも自己負担が前提になります。

雪の前に「応急」と「本工事」を分ける

奥能登では12月以降の積雪で、重機の搬入や産業廃棄物の搬出が難しくなります。秋のうちに次の段取りを進めておくと、冬の間の悪化を抑えやすくなります。

  • 傾いた棹石の仮置きや、ブルーシートでの養生などの応急対応を石材店に相談する
  • 本工事は融雪後に行う前提で、見積もりと契約条件 (着工時期・中断時の扱い) を固めておく
  • 補助の申請書類 (様式・位置図) を先にそろえ、完成後すぐ申請できるようにしておく
  • 修復するか、この機会に墓じまい・改葬 (お墓の引っ越し) を検討するかを、冬の間に親族で話し合っておく

能登町・穴水町の補助は「新規建立」や「町内への移設」も対象に含めています。被災を機に区画を移す場合も、町内であれば対象になり得るため、方針を決める前に窓口で確認してみてください。

まとめ

能登半島地震で被災したお墓の支援は、国の制度では直接カバーされず、石川県の復興基金と市町独自の制度が中心です。2026年9月27日時点で公式に確認できた主な制度は、能登町・穴水町の墓石等復旧支援補助金 (費用の2分の1、上限10万円) と、集落共有墓地の共有部分を対象にした県基金の共同墓地復旧支援事業 (2分の1、上限1,200万円。志賀町などが実施) です。

町の補助には住民登録や宛名などの細かな条件があり、共同墓地の事業は寺院墓地・公営墓地を対象外としています。珠洲市・輪島市・七尾市・中能登町では墓地向けの制度を公式ページ上で確認できなかったため、お墓のある市町の窓口に直接問い合わせるのが確実な方法です。

制度の内容や期限は変わることがあります。本記事は2026年9月27日時点の公式情報をもとにしているため、申請前には必ず各市町の最新ページをご確認ください。